科学的な健康づくり
 内藤義彦(大阪府立健康科学センター 健康度測定部長)
今、時代は正に健康ブーム。多様なメディアから溢れんばかりの健康情報が流されています。多量で種類が豊富なのは良いことなのでしょうが、肝心の質はどうなんでしょうか。同じテーマを扱っていても見解がバラバラで、一体どう判断したら良いのか混乱している人が多いのではないでしょうか?
 進歩が著しい医療現場でも、すこし前までは、伝統的に行われてきたから、エライ先生が決めたから、患者に使って有効だったという報告があるから、この治療を続けるといったものがかなり多くありました。この論法では、本当に効果的な治療なのか、有害な副作用はないのか、もっと良い治療はないのか、もっと効率的な治療はないのか、などが曖昧なままになってしまいます。
 そこで、単に伝統や権威によらず、治療法の判断基準として、科学的根拠がどの程度そろっているか(Evidence-based Medicine、EBM、科学的根拠のある医療)が重要視されるようになってきました。この流れは、病気の治療の領域だけに止まらず、冒頭の様々な健康法の有効性や地域や職域における健康づくり施策の効果判定にも影響を及ぼし、科学的根拠が求められるようになってきました(健康科学センターは科学的な健康づくりをサポートし、正しい健康情報を発信することをめざしています)。
 そこで、このシリーズでは、様々な健康づくり(特にスポーツに関連した)について、科学的根拠の視点で、知って得する情報を提供したいと思います。
 次回から具体的なトピックスを紹介する前に、今回は科学的根拠の強弱の判断基準について、例を交えて示します。
 「○○式ダイエットを試したら、驚くほど簡単に減量できた!」というたぐいの話を新聞や週刊誌の広告でよく見かけます。減量に苦労している人には大変魅力的な話なので、直ぐにでも試してみたくなる気持ちはよく理解できます。しかし、この手の話には、科学的根拠の視点ではいくつか問題があります。まず、報告の結果は誰にでも当てはまるかという問題です。減量できた人は確かにいたとしても、その背後に効かない人が多数いるかもしれないということです。また、最近のダイエット用健康食品による健康被害でもありましたように、安全性に関するデータがないと安心できません。さらに、短期に減量できても長期的にはリバウンドで元通りという例もあります。また、新たにダイエットを決意した瞬間から日常生活習慣全般が影響を受け、他の要因の影響で減量できた可能性もがあります、等々。
 どうですか?このように、一つの要因がある問題を改善するのに有効であることを証明するのは意外に難しいことが分かると思います。ちなみに、研究の種類によって科学的根拠の強弱のランク分けが可能です(表)。健康情報の質を判断する上で役立ててください。
科学的根拠の強弱レベル
1.ケース報告】 ○○を使ったら体調が良くなったというケースを少数報告する
2.多数のケース報告】 ○○を使ったら体調が良くなったという多数のケースを報告する、またはケース報告を集める
3.ケースと対照(比較群)の比較】 現在体調が良い人と良くない人の間で過去に○○を使った人の割合を比べる
4.追跡研究】 最初に多数の人の○○の使用について調べ、追跡し、後で○○の使用と体調の変化との関連を調べる
5.くじ引きによる介入試験】 くじ引きで、○○を使う人と使わない人を決め、追跡して体調の変化を調べる
6.それらを統合した研究】 介入試験のようなレベルの高い結果をまとめて解釈する
   注)番号が大きいほど、科学的根拠(証明力)が強い