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21世紀生涯スポーツ社会づくりへの提言
生涯スポーツコンベンション
総合型地域スポーツクラブ
地域生涯スポーツ推進協議会
(財)大阪府レクリエーション協会
モッピークラブ
障がい者スポーツ
21世紀生涯スポーツ社会づくりへの提言
早稲田大学教授
原田宗彦
 紙媒体で読むことのできるニューズレターも今回が最後になるが、第1回目の巻頭言を書かせていただいた私が最終回を担当することになったのも、何かのご縁であると思っている。縁と言えば、05年に大阪体育大学を離れ、東京で教え始めて3年になるが、専門のスポーツの仕事を通して、大阪との縁は以前にも増して深くなっている。それは以下に述べる3つの仕事との関係で、それぞれが今後の生涯スポーツ社会づくりへの提言とも深く関わっている。
 第一は、プロスポーツによる地域の活性化である。97年のなみはや国体と08年大阪五輪招致に関わった経験から感じたことであるが、阪神タイガースを除き、大阪のプロスポーツに対する体温はひじょうに低い。人口に比べて、スポーツエンターテイメントのコンテンツが少なく、1年を通じて盛り上がることができない大阪は、実はあまり楽しくない街なのである。英国では、プロサッカーとスタジアムが醸し出す「場所への愛情」(トポフィリア)が、生活の質的向上に深く関わっている。しかし大阪に関しては、スポーツ都市というイメージが希薄である。大阪には、場所への愛情が生まれるほど強烈なアイデンティティを持ったプロチームが幾つも必要ではないだろうか。
 そこで注目したのがプロバスケットである。2005年にスタートしたbjリーグに、ぜひ大阪からもチームを参戦させたいと考え、関係者に声をかけて大阪エヴェッサを2005年に立ち上げた。今年1月の府立体育会館の試合では、土日で約8000人を集める優良コンテンツに育ちつつある。また、これまで池田市、守口市、堺市、岸和田市などで試合を行った他、多くの学校でエヴェッサ・キャラバンというクリニックを開き、バスケットボールの振興に寄与している。
 エヴェッサの魅力は、チーム名からもわかるように、徹底した大阪色とエンターテイメントの追求である。チーム名は「えべっさん」(エヴェッサ)、マスコットは「まいど君」、ダンスチームは「bt」(弁天さん)と、大阪に染まっている。しかし施設使用料が高く、興行は楽ではない。そこで、施設使用料の減免や学校単位での観戦ツアーなど、行政と連携した地域密着型プロスポーツの振興を提言したい。
 第二は、民間的な発想でスポーツ振興事業を行う、「大阪スポーツコミッション」設置の提言である。これは昨年関西経済同友会の講演会で提案した都市の活性化方策のひとつであり、メガ・スポーツイベントの誘致から草の根スポーツの振興まで、行政と連携して計画的なイベント誘致や戦略策定、調査研究といった事業を展開する組織である。大阪の場合、昨年の世界陸上以降、大きなスポーツイベントが来る予定はないが、海外の大都市は、例外なく都市の活性化装置として種々のスポーツイベントの誘致を計画している。大阪には、都市経営の視点から、スポーツによる大阪の発展を24時間考え続ける組織が必要である。
 第三は、今元気な堺市である。総額1兆円にのぼる液晶コンビナートの建設が進むとともに、サッカーのナショナルトレセン(NTC)の建設も始まり、人々の注目が集まっている。また南海堺東駅から液晶コンビナートの入口まで、LRT(ライトレール・トランジット)と呼ばれる低床式の市電が、堺市を東西に横切って敷設され、人々の移動とにぎわいが生まれる。今年2月に堺市が開催した「先進事例に学ぶスポーツ&ウェルネス産業」における講演で、自転車によるまちづくりを提言した。堺市も、国際的な自転車メーカーである(株)シマノから寄付を受け、平成16年には「堺市自転車環境共生まちづくり基本計画」を策定しており、今後のさらなる展開に期待が寄せられる。
 スポーツは、これら3つの提言が示すように、地域にイノベーション(変革)をもたらす、地域の活性化装置である。予防医学や教育的な効果は言うに及ばず、公害を生まない環境にやさしいポストモダン産業として期待もできる。ただ、いくら良い肉(地域イノベーションの素材)を持ってきても、冷えた鉄板の上で肉を焼くことはできない。まずは、府民がスポーツに親しむ環境をつくり、鉄板を熱くしなければならない。スポーツ振興とは、様々な素材を料理する準備を整えることではないだろうか。
  最終号 vol.26