医科学的な面からの「健康的な体力づくりについて」
岡田 邦夫
大阪ガス(株)健康開発センター 総括産業医
 運動能力(体力)を高めるためには、自分にあったトレーニングプログラムが必要です。その中でも特にトレーニングにおける強度と持続時間が重要で、現状の体力水準以下の強度設定でのトレーニングを続けることは、健康づくりには寄与しますが体力づくりにはなりません。体力づくりに必要な運動強度を決めるには、運動負荷試験を受け、血中乳酸値が急に上昇する点(無酸素閾値−第一変曲点)を測定して、それを上回る強度でのトレーニングが必要となります。無酸素閾値に相当
する強度としては、一般的には、最大酸素摂取量の50%くらいとされています。しかし、100%強度でのトレーニングの継続は不可能ですので、オールアウトにならず、かつ効果的に体力(ここでは全身持久力)を向上させるためには、一定の強度でかつ一定の運動持続時間が必要となります。その指標として、OBLA(Onset of Blood Lactate Accumulation)があげられます。この指標は、血中乳酸値が無酸素閾値を超え、その後上昇しますが、さらに急に上昇する点(第二変曲点)で表されます。この点を超えてしまうと、オールアウトに至り、トレーニングが継続できなくなり、全身持久力が強化される前に中断せざるを得ない状況に陥ってしまいます。この点に相当する強度は、乳酸濃度が4mmol/Lに到達する強度、または最大酸素摂取量の85%くらいとされています。つまり、最大酸素摂取量の50%以上で85%以下の強度の範囲でトレーニングを継続することによって、最も効果が得られることになります。
 もし、全身持久力の効果的な向上を期待するのであれば、運動負荷試験を受け、無酸素閾値やOBLAを測定し、その結果から、おのおのに相当する心拍数を算出し、その目標心拍数の範囲でトレーニングすることが必要となります。また、その時の心理的運動強度を自覚することによって、生理的運動強度、物理的運動強度との相関を知ることになります。
 科学的にトレーニングをするとは、自分自身の運動時の反応をまずしっかりと理解することなのです。そのためには、トレーニング時の呼吸循環系の反応を評価・分析しなければなりません。また、全身持久力のためのトレーニングには、継続が必要で、そのためにはスポーツ障害を発生させないための筋力と柔軟性も必要です。自覚、経験はファジーですが、そのファジーなところに科学的な数値を組み入れることによって、効果的に体力レベルが向上し、かつ心理的な強さも生まれ出てくるのです。