contents
21世紀生涯スポーツ社会づくりへの提言
広域スポーツセンターだより
科学的な健康づくりについて
おおさか生涯スポーツコンベンション
生涯スポーツ指導者養成講習会
大阪府地域生涯スポーツ推進協議会
大阪府レクリエーション協会
障害者スポーツ
21世紀生涯スポーツ社会づくりへの提言
アテネ五輪雑感
大阪体育大学
学長 田村 清
 昨年の夏、世界のスポーツと平和の祭典である五輪は、その発祥の地であるギリシャのアテネに108年振りに里帰りし、多くの人に大きな感動を残した。日本が五輪参加史上最大の成績を上げたこともあるが、夢に立ち向かう選手とコーチの一生懸命戦い抜く姿も多くの人を寝不足にしたに違いない。アテネ五輪は、28競技301種目に202カ国・地域から1万1千余名の選手が参加し、史上最大の大会となり、日本は、金メダルでこれまで最多の東京五輪の16個と並び、メダル獲得も最多のロサンゼルス五輪(1984)の32個を超え、37個のメダル数であった。日本は、参加国・地域の中で、米国、中国、ロシア、豪州に次いで5番目のメダルの獲得で、このメダルラッシュにはさまざまな理由が考えられる。
 日本オリンピック委員会(JOC)は、向こう10年のメダル獲得倍増作戦である「ゴールドプラン」(2001)を立ち上げ、また、国立スポーツ科学センター(JISS、2001)は、強化の科学的な支援だけでなく合宿や練習場所としても利用され、トップの選手やチームの強化を支援する体制を整備した。国レベルで選手を支える仕組みに力を注いだことが一つの理由としてあげられる。五輪の主役である選手やコーチに焦点を当てると、イチローや中田選手だけでなく、外国の多くのプロスポーツで活躍する選手が増え、また、よいコーチや練習環境を求め、海外に練習の拠点を置くトップ選手も増えてきた。このような国際経験の増加が、海外で力を出し切れない日本選手の悪い伝統を払拭し、好成績に結びついたのは間違いないであろう。柔道の谷選手は5人の練習相手とともにアテネに入り、平泳ぎ2冠の北島選手も「チーム北島」と呼ばれる、映像分析者、運動生理学者やトレーナーなどが強化を支えた。しかし、強化の核心は、長年にわたる選手とコーチの二人三脚による夢への挑戦であり、その具体的な準備である。今回の五輪でも、水泳の北島選手と平井コーチ、柴田選手と田中コーチや陸上の室伏親子など選手とコーチの絆の強さが報道され、人間の限界に挑戦する、選手とコーチの人間模様が浮き彫りにされた。 アテネ五輪の17日間は、五輪やスポーツの原点を見つめ直す良い機会となった。しかし、五輪は、肥大化、商業化や過去最高に達した禁止薬物使用(ドーピング)の勝利至上主義などの課題の多くを残し、アジアで開催される三度目の北京五輪(2008)に引き継がれる形となった。現代哲学のLasch(1979)は、「現在のスポーツは、教育、ビジネス、エンターテイメントの目的を達成する一つの手段や方法に退化、卑小化しており、スポーツが、本来、本質的に持っている健全な文化に立ち戻るべきだ。」と主張している。北京五輪は、スポーツや五輪の精神を発揚する場へ回帰する方向に踏み出すことができるのだろうか。 
vol.18