スポーツと食事・栄養
大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科 運動栄養学 岡村 浩嗣
 健康の維持・増進には「運動・栄養・休養」が大切と言われています。「栄養」とは、生物が活動したり生存したりするために必要な物質を体外から取り入れ、それを体内で利用することをいいます。この体外から取り入れる物質が栄養素です。
■何をどのくらい食べるか
 栄養素にはそれぞれに役割があり、例えば炭水化物と脂肪は活動するためのエネルギー源、たんぱく質は身体を構成する材料となります。人間は栄養素を食品から摂取します。食品はどんな栄養素を豊富に含んでいるかによって、いくつかのグループに分けられます。
 学校給食で食品が色分けされているのがグループ分けの例です。エネルギーになるものが黄、体づくりの材料になるものが赤、体の調子を整えるものが緑のグループに分けられています。黄のグループには穀物、すなわちご飯やパン、麺類が入り、赤には肉、魚、卵、大豆から作られた食品、そして緑には野菜、海藻、きのこが入ります。3つのグループから選んで食べると、栄養素をバランスよく摂取できます。同じ色のグループの食品ばかり食べていると栄養素のバランスが悪くなります。
 「ご飯と豆腐の組合せはバランスが悪いんでしょう?」と言った人がいたと聞いたことがあります。どちらも白いのでバランスが悪いと思っていたらしいのですが、もちろんこれは誤りで、ご飯と豆腐は黄と赤の組合せになるので良い組合わせになります。
 日本食は主食・主菜・副菜からなっています。この組合せは栄養学的にみて理想的で、主食は黄のエネルギー源の炭水化物、主菜は赤色の体づくりの材料のたんぱく質、副菜は緑色の体の調子を整えるビタミン、ミネラルを豊富に含む食品です。主食・主菜・副菜は3:1:2が望ましい比率です。これに食後あるいは間食として果物を食べ、乳製品を摂るとさらに良くなります。乳製品は日本人に不足しやすいカルシウムの良い供給源です。成人であれば太ったりやせたりしなければ食べている量は適切といえます。成長期の子供では体脂肪が増えすぎなければ量は適切と考えていいでしょう。
■どう食べるか
 ところで、これらの栄養素がそれぞれの役割を発揮するためには「何をどのくらい食べるか」とともに、「どう食べるか」が大切です。
 「夕食を食べ過ぎると太りやすい」「寝る子は育つ」というのは、食事と身体活動の順番、つまり摂取タイミングによって同じ物を食べても体に対する影響が異なることの例です。
 食べた後に活動すればエネルギーが消費されるので太りにくいのですが、食べた後に寝るとエネルギーの消費が少ないので太りやすくなります。
 「寝る子は育つ」のは、子供はエネルギー消費量が多いので少々食べても太りすぎることは少なく、むしろ昼間にしっかり体を動かして遊んだことで刺激された筋肉の成長に、夕食で摂った栄養素が寝ている間に使われるためと考えると納得がいきます。
 スポーツ選手は、トレーニング後は早めに食事を取って休養すべきです。これも「寝る子は育つ」と同じ理由になります。
 このように、栄養素の作用は運動するかどうかで違ってきます。上述の栄養の定義から、運動は栄養素の一つと言ってもいいでしょう。
 メタボリックシンドロームは簡単に言えば太り過ぎのことです。その理由は運動不足と食べ過ぎです。中高年になって筋肉が少なくなるのは運動不足が原因です。筋肉が少なくなると基礎代謝が低下して、摂取したエネルギーが消費しきれずに余りやすくなって太ります。これがメタボリックシンドローム、生活習慣病への道です。
 筋肉はボディビルのようにつける必要はありません。若い頃は太りにくいから、中高年になっても若い頃の筋肉量、言い換えると体重と体型を維持するようにするのが基本です。
 運動・栄養・休養は健康に大切な三つの生活要素を並べているだけではなくて、その順番にも意味があります。
 最後に私の恩師のことばを紹介します。「自分の意志で鍛えることのできる組織は筋肉だけ。肝臓は酒を飲んでも鍛えられない」。筋肉量を適切に維持するには、日常生活のなかにスポーツ・身体活動を取り入れることが大切です。
●関連リンク
国立健康・栄養研究所
http://www.nih.go.jp/eiken/
国立スポーツ科学センター
http://www.jpnsport.go.jp/jiss/
スポーツ栄養・食育ガイド
http://www.shoku-sports.jp/
健康・体力づくり事業財団「健康ネット」
http://www.health-net.or.jp/
財団法人日本アンチ・ドーピング機構
http://www.playtruejapan.org/