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自転車のある生活は、人生を2倍楽しくする

「自転車のある生活は、人生を2倍楽しくする」公益法人シマノ・サイクル開発センター 自転車博物館 事務局長・学芸員 長谷部 雅幸(はせべ まさゆき)さん

1973年日本大学卒後、(株)シマノ入社、シマノレーシングチームにて活躍後、開発設計部にて自転車部品の開発・設計に携わる。自転車の本場ドイツとオランダに10年間駐在するなど海外の事情にも詳しい。自転車技士、自転車安全整備士、日本サイクリング協会インストラクターの資格を持つ。スポーツBAA(一般財団法人日本自転車協会)専門委員。2011年マスターズ優勝など現在もサイクルスポーツを楽しむ。

自転車がある生活は、人生が2倍楽しい

「小学校のころから自転車に乗るのが大好きだった」と語るのは、自転車博物館で事務局長を務める長谷部さん(63)。大学時代には全日本選手権やアジア選手権で優勝。大手自転車パーツメーカーの(株)シマノに入社後、開発設計や企画、営業を経験し、駐在員としてドイツとオランダで10年を過ごした。2000年に50歳でツール・ド・おきなわで優勝し、2011年に60歳でマスターズのロードレース部門で優勝を飾るなど、自転車とともに人生を歩んできた。そんな長谷部さんが「自転車のある生活は、人生が2倍楽しい」と、自転車の魅力を語る。

―一歩ペダルを踏み込めば、そこから旅が始まる―

「旅が楽しいのは非日常だからですよね。自転車は一歩ペダルを踏み込めば、自分の身体で風を切るほどのスピードがでます。風が連れて来る四季を感じて、すぐに非日常の世界に包まれる。そこから旅が始まるんです」と長谷部さん。
自転車博物館では地域への貢献活動の一環として、健康増進を目的に自転車によるツーリングを実施している。「今年の6月には2号線の淀川大橋からスタートして、武庫川サイクリングロードを北上、宝塚大劇場、手塚治虫記念館を通って、中山寺付近で美味しいランチを食べて、大阪に戻って来るというコースでサイクリングをします。ぜひ参加してください」と気さくに話す。
「僕が自転車に乗る理由のひとつに、美味しい物をたくさん食べたいということがあります。いい空気を吸ってエネルギーを使って、身体が食物を欲したときに食べるから美味しい」と、笑顔を見せる。

―自転車はひとが集うから楽しい―

長谷部さんは自転車の魅力のひとつに、“ひとが集う”ことを挙げる。「老若男女が同じフィールドで同じことをするから、やっぱり話題も増えます」スライドショーに映し出された写真には、過去のサイクリングイベントに参加した人達の笑顔が並ぶ。「これは奈良の飛鳥から京都の嵐山まで行ったときの写真です。一緒に90kmを走りました」長い距離を移動するなかでいろんなことが起こり、参加者には一体感が生まれる。「ふいに目の前に薬師寺が現れた瞬間の感激を、みんなで分かちあうことができる」と、自転車を通して人と交流する楽しさを語る。

仲間と自転車について語ることも楽しみのひとつだ。「機材を余り使わないスポーツの仲間だと、年配の人と若い人で話が合わないことがあります。ところが自転車だと、どこの自転車がかっこいいとか、タイヤはこういう風に工夫するとパンクしないとか、老若男女を問わずに自転車を中心に話をすることができる」と語る。また、機材を通して考えるインテリジェンスを養うことで、若い人にも負けない走りが年配の方にもできると言う。「自転車はパワースポーツなので、若い人のほうが速いに決まってます。でも持久力や乗り方、あそこを走るにはどうしたらいいのかということを機材を通して考えることで、年配の人でも結構行けるんです。年下の人より先に登り坂を上り切ることも多々あります。そういう意味で自転車を楽しむためには、インテリジェンスも必要です」

―人間にとって一番の不幸せは病―

自転車は健康を維持する上でも有効だ。「人間の生きる目的は幸せになること。一番不幸せなのは病気です。日本人の主な死因別の死亡数を見ると、心疾患や脳血管疾患だけで3割弱ありますが、これらは適度な運動をしていれば大分防げる病です」と話す。
なぜ齢を重ねると太りやすくなるのか。「齢をとると基礎代謝が落ちてくるので、若い頃と同じような生活をしていると太ります。体重1kgは7,000kcalです。もし何も運動をしない人が、基礎代謝を700kcalオーバーする食生活を10日間続けたら10日で1kg太ります」
では、基礎代謝量を決める要因はなにか。「基礎代謝の38%は筋肉です。身体の筋肉の60%以上は下半身、そして大きい筋肉はすべて脚についています。大腿筋、大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングなどを鍛えておくことが重要です」
加齢とともに衰えが顕著なのもまた、脚の筋肉だと言う。「20代のころの脚力を100とすると、60代の脚力は48まで低下します」基礎代謝量の鍵を握り衰えやすい脚を、自転車であれば楽しみながら鍛えることができる。 ただしメタボ予防やダイエットを考える場合、自転車に乗るだけでなくどのような食べ物を摂取するかが重要であると長谷部さんは説く。「私がランニングで時速10kmで1時間走っても、消費できるカロリーはせいぜいドーナツひとつ分程度。食事と運動の記録を付け、食べるものに気を遣うのと運動の量をコントロールすることが大切」と語った。

―街に自分のルートを作る。きっと素敵な発見があるはず―

近ごろ自転車のハンドルを握っていないというかたも、長谷部さんが仰るようにぜひ自転車を生活の中に取り入れ、人生を2倍楽しくして欲しい。「街中でも幹線道路から一本入ったところには、自転車が走りやすい道はたくさんあります。自転車のエネルギー効率は徒歩に比べて5倍高いですから、少しぐらい遠回りをしたってそんなに時間は変わりません。自分で走りやすい安全な道のルートを作ればいいし、それが楽しいんです。きっと思わぬ素敵な発見があるはずです」

取材日:2014年2月28日