大阪サイクルナビ

自転車のある生活は、人生を2倍楽しくする

「自転車で大阪の街を五感で感じてほしい」NPO法人Homedoor 事務局長 松本浩美さん

シェアサイクル事業「HUBchari(ハブチャリ)」は、NPO法人Homedoor(ホームドア)により2012年4月にスタートした。現在は大阪市内に9か所の拠点を持つ。利用者は1時間100円から自転車を借りることができ、どの拠点で自転車を返却してもよい。単に自転車を貸し出すだけではなく、自転車のメンテナンスや運営業務を通して、生活保護を受ける元ホームレスの人々に働く機会を与え、中間的な就労支援を行っている。

自転車で大阪の街を五感で感じてほしい

「HUBchariの事業を始めるまでは、あまり自転車に乗っていなかった」と語る松本さんは、今では拠点ごとの自転車台数を平準化するために、冬でも自ら自転車を漕いで運ぶこともあると言う。「新今宮から大阪駅(約6km)ぐらいなら平気で走ります。最初はやっぱり寒いんですけど、しばらくすると背中のあたりが熱くなってきて、そんなに寒いという感覚はなくなる」と、溌剌とした笑顔を見せる。

―おすすめのスポットは、夕暮れどきの中崎町―

「自転車で大阪の街を走ってみて、私自身もそれまで気が付かなかった面白いスポットを発見することができました。普段はあまり自転車には乗らないという方も、ぜひ自転車で出かけて、大阪の街を五感で感じて欲しい」と語る。
松本さんのおすすめスポットは、長屋を改装したレトロでお洒落なショップがひしめく大阪市北区の中崎町だ。「中崎町は古民家を再生したようなお店が多くて、路地裏の思いもよらぬ所にカフェがあったりします。中崎町のように路地に店舗が密集しているエリアは、自動車だとそもそも入れませんし、徒歩だと行動範囲も限られてしまいます。夕方になるとお店に明かりが灯って、お昼間には気が付かなかったお店も見つけやすくなるので、ぜひ陽が陰ってから自転車で散策して欲しい」と、自転車で街を走る魅力を話す。

―「せっかくの大阪、わざわざ地下に潜りたくない」と外国人旅行者の声―

大阪市内は縦横に地下鉄が整備され移動に不便はないが、HUBchariを利用する外国人観光客からは「せっかく大阪まで来たのに、わざわざ地下に潜りたくない」という声が聞こえてくると言う。
「自転車で地上を走って、大阪の景観を楽しみながら、道すがら思わぬ掘出し物を見つけたりと、外国から観光に訪れた方々は私たちの自転車をそういう風に使ってくれています」旅行者の言葉から、移動の過程を楽しむことができる自転車の魅力に気付かされる。

HUBchariが外国人観光客に利用されるのには理由がある。海外からの観光客に大阪の魅力を知ってもらおうと、2013年に外国人の目線から見ておもしろいスポットをマッピングした“外国人がつくるOSAKA OTAKU MAP”という観光マップを制作し、ホテルや市のビジターズインフォメーションセンターで配布した。そうした活動の甲斐もあって、このマップを片手にHUBchariを訪れる外国人旅行者も現れた。
通天閣や海遊館などのメジャーな観光スポットではなく、あえて猫カフェ(北区)や木津卸市場(浪速区)など、実際に外国人が面白いと感じた場所をリサーチし、隠れたスポットを提示した。「自動車だといちいち駐車場を探して停めてというのが面倒だし、電車だと乗り継ぎなどが微妙に遠い」自転車の軽快さを活かして、マイナーで面白い観光スポットを堪能してもらうのが狙いだ。

松本さんは自転車の経済性も魅力だと語る。「大阪市の市営地下鉄の初乗運賃は200円(2014年4月から180円)ですが、HUBchariなら1時間100円で利用できます。大阪市営地下鉄・ニュートラム・バス全線が1日乗り放題になる乗車券“エンジョイエコカード”は800円(平日・おとな)ですが、HUBchariなら700円で自転車を一日借りることができます」と胸を張る。

HUBchariでは、ブリジストングリーンレーベルが販売するMarkRosaという車種をメインで貸し出している。「クロスバイクとママチャリの間ぐらいのスポーティな自転車で、スピードもある程度だせて乗りやすい。日常的に自転車に乗っている方にも、普段はあまり自転車に乗らない方にも受けがいい」と話す。また、女性客からの要望を受けて20インチタイヤの小ぶりの自転車(ミニベロ)も導入した。「どちらも6段変速が付いているので、坂道も楽に走れる」自分の体格や好みにあわせて選べるところも自転車の魅力のひとつだ。

―“働く場所を提供する”HUBchariが引きだした新たな自転車の魅力―

そんなHUBchariの事業を裏で支えるのが、松本さんらが親しみを込めて“おっちゃん”と呼ぶ、生活保護を受ける元ホームレスのひと達だ。ホームレス状態に陥ったひと達の多くが自転車を使った廃品回収を生業にするそうだが、商売道具の自転車の故障に自分で対応するうちに、自然と自転車の修理技術を身に付けているそうだ。そうした“おっちゃん”たちが、特技を活かしてHUBchariの自転車のメンテナンスを行っている。「ホームレスの方で生活保護を受け始めて、仕事を探しているけれども、過去の経験が枷になって仕事が見つからないという方に仕事を提供しています。これまでにHUBchariでお雇いした方々は54名ですが、そのうち40%の方が無事に次の仕事を見つけて働いています。もっとこの割合を増やしていきたいと思っています」シェアサイクル事業を通して、生活保護を受ける人たちに働く場を提供する、HUBchari独自の取り組みだ。

その他、HUBchariでは大阪市北区の拠点から出発してUSJや北港、海遊館などを巡るサイクリングツアーなども実施している。次のツアー企画も準備中とのことなので、自転車をお持ちの方もお持ちでない方も、自転車の魅力、大阪の魅力を再発見する旅に一緒に出かけてみて欲しい。

取材日:2014年2月28日